催眠療法コラム

記憶と催眠


大切なものを無くしてしまった。記憶をさかのぼって、思いださせて欲しい。
辛い思い出を、なくしてしまいたい。

催眠療法に携わっていると、こうした記憶にまつわるご相談が度々ございます。
深い催眠状態に入りますと、記憶をなくすこともできるのですが、正確には、記憶はなくなるのではなく、より深い深層心理に封印されるだけで、なくなってしまうわけではありません。
ですから辛い思い出に関する記憶は、一時的に意識にはのぼってこなくなっても、無意識に精神的ストレスとなって身体に現れたりすることになります。
例えば、自分では辛い気持ちも、ストレスも感じてはいないのに、なぜか夜眠れなくなったり、胃潰瘍になってしまったり。
ですから、「あまり記憶をなくしてしまいたい」というご依頼があっても、はいそうですか、とご希望の通りには出来ないこともございます。

日常において、ちょっとした記憶がなくなってしまう、もしくは思い込みによって記憶が書き換えられてしまうような体験で、生活に様々な影を落としてしまうことで悩まれている方もおられます。

今までそのような体験をされている方と数多く接して来ましたが、ほとんどの場合(器質的な脳の障害を除く)、自我の防衛機制が影響しています。

自我の防衛機制に関する詳しい説明は割愛させて頂きますが、要するに「間違い」や「失敗」を受け入れたくない自分「忘れる」ことで、自尊やこう在るべき自分像を守ろうとする癖がついてしまっている可能性があります。

元来の思い込みの強さと、その自我の防衛機制(否認といいます)が相俟って、記憶障害を引き起こしているのかも知れません。

それを解消して行く為には、先ず自分は思い込みがとても強いので、間違いを起こすことが多々あるという事実を受け入れ、その時その場のリアリティをしっかり感じ取りながら、「今、ここ」を大切に過ごすことを心掛けてみて下さい。