体験談

苦しむ私と苦しまない私(A.M さん 女性)・・・ノイローゼ/アルコール依存/不眠

心を病んだ人間は、いつも自分を苦しめることを考えています。そのように考えたくないと言いながら、その状態から逃れることができません。私も、以前はそういった人間の一人でした。考えたくない、考えまいとして、また考えてしまうという悪循環の中で散々苦しみました。その挙句に食べることも眠ることも満足にできないようになりました。その上、アルコールの多飲が加わり、心身共に衰弱していました。そんな時、知人の医師から催眠療法を紹介されました。

当時私は、催眠治療についての知識は全くありませんでした。催眠治療では、「あなたは、暗示をただ聞いていて下さい。こちらに来たら、あなたはもう何もしなくて良い。考えなくて良い。」と言われました。先生方の暗示は、患者をくつろげるようにするもので、暗示を聞いている間、私は自分を苦しめることを考えずに済みました。「ただ聞いていれば良い。」ということは、その時の私にとって有難いことでした。初めての治療を受けて、私は「何か楽だな。」と感じました。「何もしなくて良い。」については、実際私は何をする気もなかったのですが、とにかく通わなければ、どうにもなりません。これには苦労しました。体力・気力の衰えに加え、アルコールの問題を抱えていた私は、残りのエネルギーの全てを「通うこと」の一点に注ぎましたが、それでも何度か挫けそうになりました。
「考えなくて良い。」それを聞いた時は私は、ただでさえ自分を苦しめることばかり考えているのだから、これ以上、何も考えないようにしようと決めました。そして本当に私は、治療についても、自分の容態についても、一切考えませんでした。
そのような状態で、私は治療を受け続けました。催眠に深く入れるようになるにつれ、食欲が増し、眠れるようになりました。アルコールの量も減ってきました。催眠中は、自分の考えに苦しむことは全く無くなりましたが、一人になるとまた、自分の考えに苦しみました。「催眠中は苦しまない。」「催眠後は苦しむ。」そんな状態をひたすら続けていました。その間はずっと、「ああ、私は何も分からないのだなあ。」という、悲しい気持ちでいました。
そんなある日、突然私の中で「こんな苦しみにもう耐えられない!不愉快だ!」という怒りが膨れ上がり爆発しました。そして、「自分を苦しめる考えを持つなんて全く間違っている。そんなことは考えなくて良い。」と思えるに至ったのです。その瞬間、私は長い苦しみから解放されました。やっと私は、自分に自分が何をしてきたのかが分かったのでした。
そもそも人間が、自分を苦しめる考えを持つことが、不当なことだったのです。私は催眠治療を受けて、「苦しまない私」と「苦しむ私」の二人の私を体験することによって、そのことを理解できたのです。

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